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2023.03.29

ディープな東山の伝統と文化を体感できる!「UPCYCLE LIFE HIGASHIYAMA」

ディープな東山の伝統と文化を体感できる!「UPCYCLE LIFE HIGASHIYAMA」

京都市東山区への移住・定住促進に向けた、お試し居住プロジェクト「アップサイクル ライフ ヒガシヤマ プロジェクト」が始動。今回は、Episode.0として、国内外のアーティストやクリエイターに滞在いただき、最終的に次のお試し居住のプロモーションにつながるような作品を制作し、「音羽山 清水寺」にて作品を展示します。

本記事では、今回のプロジェクトの発起人である、株式会社ニシザワステイ代表の西澤さんと、NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTOの総支配人である長友さんに、本プロジェクトの概要や立ち上げの経緯、また東山区の魅力などについてインタビューしました。

 

株式会社ニシザワステイ 西澤 徹生さん                                                        1988年生まれ。京都市中京区出身。小学生の頃に披露したダジャレ100連発、高校生でのM-1甲子園出場など常に人を笑わせることだけに全神経を集中させていた。大学卒業後は、JTB西日本に就職し、兵庫県の姫路支店で窓口業務や法人営業を担当。4年勤めたのち、独立し、京町家の1棟貸し宿泊施設「KYOMACHIYA-SUITE RIKYU」を開業。京都大学の観光MBAを卒業後、2022年にコワーキングスペースの「SIGHTS KYOTO」を開業。

NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO 長友 健太朗さん                                                   1985年生まれ。宮崎県 延岡市出身。高校まで宮崎・鹿児島で過ごし、大学は東京に進学。大学卒業後、JR九州に入社し、駅員や車掌を経て、JR九州ホテルズでホテル開発・運営に従事。東京や沖縄、タイなど、様々なエリアでホテル開発に携わり、NOHGA HOTELが立ち上がる2018年の4月に野村不動産へ転職。上野・秋葉原の立ち上げに始まり、2021年からは京都の「NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO」の総支配人を務める。

 

“観光”の力で、東山区へ移住するきっかけを増やしたい

ーー「アップサイクル ライフ ヒガシヤマ プロジェクト」を始めるに至った経緯は?

 

西澤 東山区は、祇園や清水寺などもあり観光客は多いのに、実は人口減少の課題を抱えています。空き家率も京都市内でワースト1位なんです。東山区が人気観光地となったことで、地価が高騰したり、観光客で混雑したりなど、我々のような宿泊業や観光業がその原因の一端になっているのではないかと、どこか責任を感じていて……。

 

西澤 そんななか、あるご縁から公民連携・課題解決推進事業「KYOTO CITY OPEN LABO」に参画する機会を得られ、今回のプロジェクトの構想が立ち上がりました。実は、本プロジェクトの核である「アップサイクル」というキーワードは長友さん発案なんです。

2時間くらい、東山区と僕と長友さんとコアバリューについて議論を交わしていたところ最終長友さんがシュートを決めてくれました。「アップサイクル」というキーワードが出た瞬間、「これだ!」と全員の意見が一致しました。

変態たちが、カオスな東山の暮らしを味わう「お試し居住体験」

 

ーー「アップサイクル ライフ ヒガシヤマ プロジェクト」について教えてください。

 

西澤 株式会社ニシザワステイ、NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTO、京都市東山区と公民連携して実施する、京都市東山区へのお試し居住プログラムです。

期間は1週間ほどで、東山区の観光資源である清水寺や三十三間堂、祇園のほか、京焼・清水焼などの伝統文化を感じられるような内容になっています。

長友 お試し居住プロジェクトは、既にさまざまな自治体や事業者で実施されています。なので、せっかくやるなら、「尖った人」や「ど変態」が集まるようなおもしろいことをしたいなと。そこで、2023年春の本格始動前に、Episode.0として国内外のアーティストやクリエイターに滞在いただき、感じたことを1つの作品として発表してもらう企画を行うことに決定しました。

 

ーー参加アーティストからは、どんな声がありましたか?

 

長友 楽しいという声が多かったですね。例えば、平安神宮の「平安蚤の市」や清水寺の「1000market(サウザンドマーケット)」といったイベントはもちろん、京都市内には小さなギャラリーが数多く点在しているので、インスピレーションを受けやすい土地です。

ちなみに今回、東京や会津若松など国内のクリエイターから、台湾や北京、そしてアイスランドに住むクリエイターまで参加していて、みんな東山区に刺激をもらったと言ってくれてます。実は、今回のプロジェクトで、すでに1人移住したいという人まで出てきてて。

西澤 マジっすか!!すごいですね。

 

長友 アーティストの方いわく、京都は東京よりもみんなでまちやアートを盛り上げようという気持ちが強いみたいです。だから、アーティストも活動しやすいのかもしれませんね。

ーー今回、展示会場が清水寺ですが、このような有名観光地とのコラボなど、プロジェクトを進める上で苦労したことは?

 

長友 東山区役所の皆様が良好な関係を築いてご協力いただいたおかげで、実のところ、僕らはあまり汗をかいていない(笑)。

西澤 めちゃくちゃ話早かったですよね(笑)。我々の言葉も説明も足りないし……。まだ、始まったばかりのプロジェクトで具体的な部分をお見せできていませんが、ひたむきに頑張っている部分に共感してくれたのかなと思いますね。

 

長友 真正面からお話しをさせてもらうと、協力してくれる方が多い印象です。

西澤 本当に地域を盛り上げたい、良くしたい気持ちに尽きますね。京都はチャレンジを応援・理解してくださる方が多いまちやと思ってて。京都は「一見さんお断り」の印象が強いですが、それは旅行者が多い土地柄だからこそ、選別する文化が育まれたんだと思うんですね。でも、受け入れてくれたら、めちゃくちゃ温かいんですよ。

ーー他の移住体験とは違う、おすすめのポイントがあれば教えてください。

 

西澤 このプロジェクトでは、ただ東山に泊まるだけではなく、”暮らしを味わうこと”を重視しています。観光とは違う京都の本質を感じられる面白い体験や、人情味が伝わるコンテンツを用意してます。

長友 僕は宮崎出身で、京都に移住してもうすぐ2年になります。飲みに連れていってもらったり、いろんな場所を紹介してもらったり、良くも悪くもとても面倒を見てくれるんです。住まないとわからない京都の良さを日々感じています。

 

長友 福岡や宮崎、鹿児島とさまざまな場所に住みましたが、特に京都は人情深い場所だなと思いますね。仲間として認めてもらえると、他のまちよりもさらに熱い部分が多いんです。このプロジェクトでは、そういう表層的ではない、ディープな京都を感じていただける内容になっているかなと思いますね。

有名観光地、花街、陶芸。さまざまなものが交差する”カオス”さが東山の魅力

ーー京都市でも、東山区がおすすめな理由はありますか?

 

長友 祇園や清水寺、三十三間堂など、いわゆる「ザ・京都」な観光資源が集約している一方で、道1本入れば陶芸の工房や、舞妓さんや芸妓さんが歩く花見小路、地元の人が住むエリアなど、さまざまな要素が入り乱れるカオスさが魅力ですね。 これは京都の中でも唯一じゃないかな。

西澤 確かに、公園や大きいスーパーがあるまちは子育てに便利ですが、どこか無機質に感じてしまうんですよ。しかし、東山には夜のまちも、お寺も、鴨川も、ラグジュアリーホテルも、三ツ星レストランも、博物館や美術館も、さらには陶芸家も。もう統一感がなくてわけわかんないですよ(笑)でもそれっておもろいですし、感性が磨かれますよね。僕も子どもがいるんですけど、子どもにとっても面白くて刺激的な場所だと思うんですよ。

 

ーーこれから京都に移住したい人が抑えておいた方が良いポイントや、馴染むためのコツは?

 

長友 かっこつけず、上辺で取り繕わずに、素直に接することですね。それが一番です。

西澤 いや、ほんまそうなんですよ。素直さが一番。「知らんもんは知らん」と言えば教えてくれますし。良い意味でも悪い意味でも人間力が試されるかもしれませんね。でも、それは気持ちよく挨拶する、かっこつけないみたいな基本的なコミュニケーションであって、決して難しい話ではないです。

ーー東山区に移住したら絶対行った方が良いおすすめの場所を教えてください。

 

長友 台湾料理 萍萍(ピンピン)。陶芸家の猪飼祐一さんに連れて行ってもらってから、多い時は週2ぐらいで通っています。台湾人のお母さんが優しくて、居心地が良いんです。カウンター5席とテーブル1個しかないんやけど、 高尚な陶芸家の先生や、大学生、訪日外国人など、多様な人が混ざり合っていて。まさに祇園の中のカオスですね。ここのイチオシ料理は水餃子。あとトマトと卵の中華炒めや台湾ラーメンもおいしいですよ。

西澤 6年ぐらい髪を切ってもらっている吉田理髪店さんですね。元々、吉田理髪店に行く前はアフロヘアやったんすよ。

*吉田理髪店4代目マスター池本さん

 

長友 めちゃくちゃ攻めとるね(笑)。

西澤 人生は一度きり、とにかくやってみないと後悔すると思い、会社辞めてアフロにしたんです。2年間ぐらいアフロヘアでしたが、あだ名がアフロになったのでやめました(笑)。その後、自宅からすぐのところにある理髪店が気になっていたので、入ってみたら担当の方がすごく良くて。

子どもの頃、髪を切るときは親父と一緒に理髪店に行ってたんですよ。そこで、「あの店行ったよ」「こんな店できるらしいで」みたいに、親父が店主の方と地元トークをしていたんですね。要は、散髪屋はまちの社交場やったんですよ。まさに、髪を切るだけでなく、まちの情報という付加価値をつけているなと。そこに魅了されて今でも通っています。

地域や社会を良くする第一歩は、「目の前の人の笑顔」を作ることから。

ーー東山区に来て、出会えて良かった人は?

 

長友 陶芸家の猪飼さんとディーゼルジャパンの野口さんですね。僕がNOHGA HOTEL KYOTOで最終的に成し遂げたいことは、京焼や清水焼をリブランディングし、世界に発信することで……。  

猪飼さんには、陶芸家さんを紹介いただいたり、窯を探していただいたり、京焼・清水焼の作家さんたちとともに実施している「京都・五条やきもの市」の中心メンバーに声をかけていただいたりしてくれています。先ほど話したように、プライベートでもよく飲みに行く仲間で、公私ともにお世話になっていますね。

*陶芸家の猪飼さん

 

ディーゼルジャパンの野口さんは、NOHGA HOTEL AKIHABARA TOKYOを作っていた時に、ホテルのユニフォームや、レストランのオリジナルエプロンを制作する中で協力してくれた方です。その後、NOHGA HOTEL KIYOMIZU KYOTOの立ち上げの際に連絡したら、近くの七条に住んどったんですよ。

食やアート、アパレル、音楽関係の方々を紹介していただいています。おかげでARTIST IN RESIDENCEのアーティストとのつながりができたり、月2回開催している音楽イベントにも、ハイレベルなアーティストの方を呼べるようになったりしています。もちろん、プライベートでも飲みに行く飲み仲間でもあります。

西澤 宿の向かいに住んでいる前島さんですね。宿をオープンする前から応援してくれていて。子どもが生まれたときも、宿を開業したときもお祝いをもらったんです。そんなん普通渡します?渡さないでしょ?

コロナでしんどいときも、「宿泊業やから大変やろ。お客様絶対戻ってくるから頑張りや。」と、ずっと励ましてもらっていました。そういう励ましに何度も助けられたし、本当に感謝してます。

京都のオーバーツーリズムのニュースを見るたびに、「みんな、迷惑してるんちゃうんかな」と思いますが、なかにはこうやって応援してくれる方もいるんですよ。それを僕は伝えたくて。京都は冷たいまちではなくて、とてもあたたかいまちなんです。

長友 そんな人、なかなかいないよね。確か、今回のプロジェクトを立ち上げるきっかけの1つでもあるんですよね。

西澤 そうですね。社会のために何かをするという気持ちは、この前島さんから受け取った応援によって芽生えました。「この人を悲しませたらあかん。頑張っている背中を見せたい!」という気持ちが、間違いなく原動力になっています。「社会のために」という言葉は壮大に感じますけど、結局、原点は”目の前の人”なんですよ。前島さんを喜ばせたい、ただその気持ちだけなんです。それが、結果的に東山や京都、ひいては社会のためになるんじゃないかって思いますね。

 

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