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2026.01.19

「常に“ゲスト”でいたい」――その言葉に込められた俳優・角野卓造さんの京都愛を紐解く。

「常に“ゲスト”でいたい」――その言葉に込められた俳優・角野卓造さんの京都愛を紐解く。

年間3分の1は京都ステイ。角野さんを虜にする京の魅力とは

以前ご登場いただいた俳優・近藤芳正さんのインタビュー中、京都を知る大先輩としてその名が挙がった俳優・角野卓造さんに、京都愛について語っていただく機会が得られました。

「京都に住んでいないけど、いいの?」というお言葉通り、角野さんの京都暮らしはいつでもホテル滞在。「ホスピタリティが素晴らしい」と絶賛される定宿『ホテルオークラ京都』に毎月1週間から10日ほど連泊し、京都をゆるりと楽しまれています。さて一体、どんな京都DAYSを送られているのでしょうか。

 

角野 卓造(かどの たくぞう)さん
1948年東京都出身(大阪育ち)。1970年、文学座附属演劇研究所入所。72年の『飢餓海峡』で初舞台を踏み、75年に座員となった後は2024年3月に退座するまで多くの作品に出演。最も有名な代表作はドラマ『渡る世間は鬼ばかり』シリーズ。近年では、『湯道』(2023年/東宝)、映画『ミステリと言う勿れ』(2023年/東宝)、『お前の罪を自白しろ』(2023年/松竹)などの話題作で名バイプレーヤーとして活躍。2008年、紫綬褒章授賞。著書に、『万事正解』(小学館刊)、『予約一名、角野卓造でございます。【京都編】』『続・予約一名、角野卓造でございます。【京都編】』(京阪神エルマガジン社刊)。

 

「きちんとした振る舞いをする客でありたい」

インタビュー会場となったのは、名物「うなべ」「うぞふすい」で人気が高いうなぎ料理専門店『わらじや』。当日、角野さんは駅から同店まで歩いて来られました。

店名の「わらじや」は、豊臣秀吉が草鞋をぬいで休憩したことに由来する

 

角野:(汗を拭いながら)タクシー乗ったら「サーッ」ですけど、それでは面白くないのでね。移動はもっぱら電車と徒歩です。呑み屋にもひとりで行くことが多いから、まちを散策しながらお店を目指します。

 

――人気連載『予約一名、角野卓造でございます。』のタイトルに偽りなし、ですね。それにしても、月に3分の1も京都にいらっしゃるならホテルステイよりもウィークリーマンションやゲストハウスを借りられる方がいいのではと思いますが……。

角野:コスト面ではどこかに家を借りるのがいいかもしれんけど、どこかに住んでまちに同化するというよりは、余所から来て、あくまでも客人としてきちんとした振る舞いをせなあかんところに身を置いておきたいんやね。精神的には、ずっとよそさんで居続けたい。それに、やっぱり毎日掃除はしてもらいたいしねぇ(笑)。

 

――角野さんにとって、“きちんとした振る舞いのできる客”とはどういった人なんでしょうか。

角野:そうですねぇ……。ちょっと距離があるじゃないですか、外から来た人って。同じテリトリーにいる仲間じゃないからこそ、糸がピンと張った状態を維持できることが重要でね。近づくと緩むし、離れすぎると切れてしまう。だから、程よい緊張関係をキープできるのがええゲストの在り方とちゃいますか。お店はもちろん、お友達との距離感もそう。あんまりズブズブにならんようにね、意識しているところはあります。対人関係については東京におっても同じで、この歳になるとね、他人の中へ無遠慮に踏み込んでいったりはできないですし、向こうさんの事情を聞きすぎないのも大事なこと。私自身は多くを語るけど(笑)、引っ付きすぎないのがええんですわ。

月刊誌『Meets Regional』で毎月1軒の酒場を紹介する連載は13年目を迎える

 

幼少期を過ごした大阪よりほっとする京のまち

生まれは東京ながら、幼稚園・小学校時代を大阪で過ごした角野さん。小学校高学年の頃には鉄道模型に夢中でした。毎週日曜日になると、鉄道マニア憧れの老舗鉄道模型店『マツモト模型』(京都市上京区)へ足を運び、角野少年はショーウインドーをじっと眺めていたといいます。

角野:あるとき、当時のご店主が「ぼく、上がり」と声をかけてくださった。中に、べったん(メンコ)なんかで自作した貨車を走らせることができるレイアウト(ジオラマ)があってね。遊んでる間、ご店主は近くでご自身の仕事をされている。陽が傾いてきて「ぼく、ぼちぼちお帰り」と言われたら、ひと言「ありがとうございました」とお礼を言って帰る。そんな週末を繰り返していました。

 

――角野さんの京都とのファーストコンタクトは、随分と早かったんですね。

 角野:その頃から、不思議と京都のまちに親近感があってね。それからだいぶ経って劇団に入ってからは、旅公演でひと月かけて近畿を巡るうち、4日か5日は京都に来てました。当時はビジネスホテルもなかったから五条界隈の日本旅館に泊まって、そこから歩いて京都会館(現ロームシアター京都)まで行ったりね。子どもの頃の記憶があるからか、京都のまちはほっとしたし、他のまちにはない独特の雰囲気を感じてたなぁ。いまでも育ったまちの大阪よりほっとします(笑)。京都のウェルカムな気質といいますか、長い歴史の中で外からの人々を受け入れてきた素地に基づいてできた“お迎えするシステム”が心地ええんかもしれませんね。

旅館から会館までは、建仁寺境内を抜けていくのがいつものルートだった

 

“京都の扉”を開けてくれた立役者との出会い

――住んでいてもなかなかコアなところには手が届きにくい京都ですが、お住まいではない角野さんが“京都通なよそさん”になられるきっかけは、何だったのでしょうか。

角野:公演中やオフの日に京都を楽しむようになると、馴染みのお店も出来てきて。ピーター・ポール&マリーの大ファンで、いまだにファンクラブに入ってるくらい音楽は好きで、ライブハウスを巡るのも楽しかったですね。ジャズ喫茶文化は京都が随一だと思います。中でも、京都会館の近くにある『jazz spot YAMATOYA』店主の熊代さんとは50年くらいのお付き合い。だから、京都の入口は熊代さんですね。彼がいろんなところに連れていってくれて、「扉が開いたな」と感じました。そうなると京都へ来る回数が増えて、一番大きいのは、『一澤信三郎帆布』の信三郎さんとお近付きになったことやね。

愛用の一澤信三郎帆布の手提げ鞄。自宅にはなんと78もの信三郎製品があるというから驚き!

 

角野:同い年なこともあってか、どんどん仲良くなってね。彼のおかげで京都での人の輪がますます大きくなりました。いろんなイベントに参加する機会が増えて、各花街のも観に行かせてもらったりして、世界が広がっています。

(写真:先斗町歌舞会提供)※明治5(1872)年、京都博覧会で開催された余興がその起源。各花街の芸舞妓さんが日頃の鍛錬を披露する公演で、とくに春に催される先斗町「鴨川をどり」・祇園甲部「都をどり」・上七軒「北野をどり」・宮川町「京おどり」は春の風物詩として親しまれている

 

「情報収集はネットではなく書籍から」が流儀

毎月1週間から10日、長いと2週間も京都に滞在する角野さん。行きつけの店が多いのは当然のことながら、雑誌連載やテレビ番組のために新規開拓にも余念がないのでは?と思いきや、実はそうでもないようで……。

角野:一澤さんとご一緒じゃないときは、完全にひとりです。1週間いてたら、一澤さんのご夫妻とおでかけするのは2回くらい。あとは、をどりを観たり、催し物に参加したり。こないだは、私と一澤さんが言い出しっぺみたいなもんで、『YAMATOYA』さんでジャズ・サックス奏者・坂田明さんの単独ライブを企画しました。コロナ前から言うてたのがやっと実現してね。

『おやじ京都呑み』が始まって以来、中高年男性から「いつも見てまっせ」と声をかけられることが増えたと笑う角野さん

 

角野:KBS『おやじ京都呑み』も3年目に突入しました。番組で行かせていただいたり、長らく続いている雑誌連載で取り上げたりで、レパートリーは増えています。どちらも始まりの頃はこちらから提案させていただいてましたが、さすがにネタも切れてくるので(笑)。
仕事量としては、KBS京都で1日、月刊誌『Meets Regional』で1日と、2日あれば足りるので(笑)。あとの5日間は調査と称してロケハンしたり、お礼参りに出向いたり。

 

――プロの裏側を覗き見するようで恐縮ですが、どんなふうにアンテナを張ってらっしゃるのでしょうか。ご紹介や口コミを利用して新規開拓されているのですか?

角野:正直に言うとね、昔は柏井先生の本(柏井壽氏は、京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、『おひとり 京都の愉しみ』『京都の路地裏』など京都の魅力を伝えるエッセイを多数執筆)が、ものすごく勉強になりました。京都の方が行かれる店を紹介する本の中では、柏井先生の書かれるものが素晴らしいと思います。ホテルにチェックインする前に書店に立ち寄って、『月間京都』『あまから手帖』などを手に取ることも。情報は書物からインプットしたい派なので、携帯もいまだに折りたたみで、インタネットを一切利用しません。スマホが大嫌いなんです。電話は通話するだけ。写真も撮らないし、メールもしません。さすがにSMSは使っていますよ。まだ字数制限があった頃、伊東四朗さんと漢字だけでやり取りしてたことがあります(笑)。「我思(われおもう)」とかね。

 

心はゲストのまま、京都ステイも日常に

――ほぼ二拠点生活を送るなかで、東京と京都で違いを感じられることがあれば教えてください。

角野:基本的に、“いい店”というのは東京・京都関係なく、変わらないと思います。出していただくもののお味はもちろんですが、最終的にはお人柄ですね。お料理だけでなくあしらいや器など、お店の人の精神性が全てに反映されると感じます。なにも高級店だけに限ったことではなく、大衆的なお店でも同様で。それは東京でも京都でも同じですね。ただ、八寸やお椀といったメニューは、京都が格別です。季節の食材を取り入れ、お皿の中で四季を感じさせてくれるのは、さすが京都。歴史を積み重ねているお店は居心地がいいですね。ご家族でされてる程よいサイズ感のカウンター割烹が好きなので、1回の京都滞在中、2軒はそういうお店を入れておきたい。

 

――行きたいお店や行かなければいけないお店が多すぎて、スケジュールが詰まりに詰まってそうですが……大丈夫ですか?

角野:東京ほどではないものの、京都も日常生活みたいになってきて。10日いたら2日は部屋呑みです(笑)。『進々堂』でコロッケバーガー買って、コンビニでサラダを見繕って。テレビ見ながら缶チューハイを開けてますよ。DVDを持ち込んで映画を観たり、東京にいるときと同じように日課のウォーキングに出たり。東に行くときは南禅寺まで歩きますし、西に向かったら、帰りに『前田珈琲』でスペシャルモーニングとナポリタン(小)を食べることが多いね。これも京都の日常性です。

撮影後は、「わらじや」ご自慢の料理を肴に一献

 

店主に「どこかいいお店ないですか」と訊くのは不粋との持論をこぼし、年に一度12月の京都滞在期間中には、必ずご自身の小学6年時の同窓会に出席するといった微笑ましいエピソードを披露。最近はフュージョンやAORを好み「三条のブックオフによく行きます」と笑いを誘います。

長らく“京都沼”に身を浸している角野さんに、京都移住の可能性を問えば、答えは「NO」。

代わりに、「オークラに泊まる日数は増えるかもしれません」と、お茶目な表情を見せてくださいました。これも一つの「二地域居住」の在り方ですね。

永遠によそさんのまま正しい振る舞いを心掛ける客人であるために、来月もその先も、角野さんは京都での日々を自然体で楽しまれることでしょう。

 

作品紹介:

「おやじ京都呑み」

KBS京都:第4火曜日20:00~/BS11:第4日曜日 21:30~
京都大好きな角野卓造さんと、京都に移住した近藤芳正さん。個性派俳優のおやじたちが、旨い酒と肴を求めて京都を呑み歩く、新感覚!グルメエンターテインメント番組です。
https://www.kbs-kyoto.co.jp/tv/oyaji/

 

『予約一名、角野卓造でございます。【京都編】』(京阪神エルマガジン社)

自費で足繁く通う京都の割烹や名酒場などを紹介する月刊誌『Meets Regional』の人気連載を書籍化。“酒の師匠”太田和彦氏との対談も収録されており、酒好きには必見の酒場放浪記。巻末には、大阪・神戸の酒場&料理やカタログも。『続・予約一名、角野卓造でございます。【京都編】』も好評発売中。